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新城香織の彼氏は東塔大学に准教授として奉職している小堀賢介がいる。香織は鏡筒大学の院生だが、彼氏のいる東塔大学へ研究者として就職したい。三十歳の賢介には縁談の話が両親からも早く身を固めろとせっつかれていた。香織がオーバードクターを卒業し講師として採用されたら、その機械に両親に紹介しようと計画していた。指導教官の村川教授から東塔大学の非常勤講師への応募は駄目だったと聞かされた。この夏に東塔大学で化学学会があるから、ついでに川村急需に会わせてやると言われて、村川急需と二人だけの上京を承諾した。だが、これは香織を罠にかける口実だった。