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バトンを繋ごうRPG 『勇者の旅立ち』
バトンを繋ごうRPG 『勇者の旅立ち』
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バトンを繋ごうRPG 『勇者の旅立ち』[小説コミュニティ]

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勇者ノベリットの冒険

かざぐるま}
かざぐるま
勇者は村を出た。装備も魔法もまだ持っていない。とりあえず北の森に向かってノベリットは歩き出した。そこに突然!!
2013-07-11 19:30:04

コメント (199)

匿川 名  2019-07-08 00:04
ふとその種田の落ち着いた様子から、ノベリットは自身の濡らした股間のことが思い出され、不意に湧き上がった恥ずかしさにぐうっと深く俯いた。
「気にすることはありません。私だって怖い。自然なことだと思いますよ。むしろ、彼らが異常なだけです」
種田はそう呟いて顎で軽くカイザー達の方をしゃくり示した。

「じゃあ、じゃあなんであなたは」

ノベリットは尋ねるつもりだった。
種田のそのどこか超然とした在り方を。
何故そう在れるのか。
無限に湧き上がる恐怖をどうやって飼い慣らしているのか。

その時種田が懐に手を入れて、ごそ、と何かを取り出した。
「これを使いなさい」
種田はそしてそう呟き、ノベリットにひとつかみの平たく黒い石を差し伸べた。
「これは」
尋ねるノベリットに種田は頷いた。
「あなたがきっと探していたものだ。そして僕が父から預かってきたものでもある。これは古代語で『ジャクワィ・デゥ・トルディステゥーン』というもので、今の言葉で言うならば――――『伝説の砥石』だ」
ノベリットは目を見開いた。

「世界が終わろうとしていることは父も識っていた。
 我らの祖先の霊が囁いたらしい。
 だからこそ私はあなたを追ってきた。
 これを、いまこそその手に取って――――」

呆然とノベリットは種田が差し出す黒い石に向け、自らの右手の平を被せるように伸ばし始めた。
その時、ノベリットの腰で伝説の剣か小さく震えるような唸りを上げ始めた。

匿川 名  2019-07-08 00:01
「やあ、これは酷い」
ふと、ノベリットの右耳の側からそっとそんな声が響いた。
あまりにその距離が近かったので、反射的にノベリットは首を勢いよく回し声のした方に振り向いた。
そこに立て膝で腰を下ろしていたのは一人の男で、視線は黒龍のような渦巻く黒雲とその直下において宙(そら)を見上げる男と女――――カイザーとアニエス――――の方に向けられていたままだった。
「――――種田――――さん」
ノベリットは呆然と男の名前を呼んだ。
男は、種田和夫は口元に微笑を浮かべてノベリットの方に少し顔を向けると軽く会釈をした。
「しばらくです」
種田はそう言ってまたノベリットから視線を切り、前方に広がる禍々しいばかりの光景を眺めた。

『禍々しい』


  実に、禍々しい。


なのに、とノベリットは思う。

なのに、なぜ種田さんはこんなに涼しい顔をしている?

匿川 名  2019-07-03 23:02
「拙いなこれは」
カイザーがそうぼそりと呟いた。
目を細め、アニエスが取り囲む闇に向け刃を横薙ぎに一閃させた。
しかしまさに虚空を切るが如く、刃は何の手応えも無いままに水平の円弧を描くのみだった。
「何が起ころうとしているんです」
アニエスはカイザーに尋ねた。
「なに、我らを灼こうとしておるのだろうよ、あの阿呆は。此処は焦点で中点と為るのだ――――おそらく、雷のな」
その言を受けてアニエスは濃く満ち行く闇の中に向け、一歩足を踏み出した。
すると忽ち――――
――――狗が闇の中から首をもたげ、滴る涎に汚れた牙をアニエスに向け突き出してきたので、反射的に彼女は身をよじりそれを避けた。
そしてそのままの姿勢からさらに垂直に刃を薙ぐ。
闇の中から実体化した犬の首は彼女の白刃に打ち落とされて、どたっと地面に転がった。
かと思うとそのまま闇が伸び、落ちた首と自らを繋ぎ、拾われた首はしゅうと音を立てながら霧の粒子と為って闇の中へとまた消えた。



地面に膝をついたまま、ノベリットはがくがくと腿が震えるのを止める術も無く、閉じ行く闇をひたすらに呆けのように眺めていた。
その時ふと内腿に温い何かを感じて俯いた。
――――下衣がぐっしょりと湿っている。
自分が失禁していたということにすら気づかず、いや、気づかなかったことが急に愉快に感じられでもしたのか、ノベリットの両足から力が完全に抜けた。
くたっと膝が折れ、地面にぺたりと尻餅をついた。
がくんと落ちた両腕で身体を辛うじて支えると、世界の総てが邪悪な観劇のように感じられた。
その彼の耳に届いたのは地響きに似た低い、うねりの音だった。
――――それは遠雷。
空にぼんやりと向けた彼の目の中に、渦を巻くように黒雲が立ち上るのが映った。
蜷局巻く竜のように、渦の中点は目指している。
打ち下ろす拳の先を見据えている。

球のように閉じ行く闇の直中を、
『いざ、いざこそ皇を討たん』と喜悦に満ちた狂った目が、
ひひと歪んでのたうっているかのように――――


匿川 名  2019-06-06 22:49
揺らぐ、
陽炎のように、
頼りなく吹けば消えるかのように、
『ゆらあ』と揺らぎ、それでも白刃を薙ぐ。

「カイザー」
とアニエスは背中を預ける男の名を呼んだ。
「応(おう)」とカイザーが気安く、実に気安く応じる。
旧知の友人から『煙草が切れたので一本くれ』と頼まれでもしたかのような、底抜けの気安さだ。

例えばそれまでの智を総動員してなお説明のつかない事象を、ヒトは奇跡と呼ぶ。
或いは魔法と、或いは祝いと、或いは呪いとこそ、呼ぶ。

世界の総てが己達に呪詛を向ける瞬間を前にして、正気を保つことは難しかろう。
だからこそ討たれ伏して動かぬ少女二人は――――喩えいま、死の川を渡ろうとしていたとしても――――『絶望と合い面することが最早無い分』だけ、この場においては幸せであるとすら言えるのかも知れなかった。

だが、

緑の闇の中から一際濃い『滾り』がくねり、ひゅっと音も無くアニエスを襲った。
反射的に身を翻したアニエスは『滾り』の奥の汚れた白を刃で打ち逸らす。
そこには『狼の牙』があった。
上目に睨み付けると、牙の先に伸びる緑の煙で形作られた曖昧な狼が後ろに飛び戻りふわっと虚空に消えた。
ふふっと鼻から抜けるような微笑みがアニエスの耳を打った。
それに導かれるように、視線は目前の敵から微塵も動かさず、気配だけを背後に送る。
「豪胆とは云わぬよ。足が震えている。だがそれでも主(ぬし)は『ひとかどの剣士』なのだな」
深く落ち着き払った青銅のような声音がアニエスの耳をまた打つ。
「――――恐縮至極」
アニエスが微笑みながらそう呟いた。



それまで信じていた世界の総てが敵に成ったように見えたその瞬間でさえ、
剣士はそのとき、間違いなく皇とともにそこに在った。

しかし緑の闇はふたりを完全に包み込み、
怒濤の如く押し潰さんばかりに、
『ぐうっ』と殆ど音を立てるかのように、
二人を極として、
点を結ぶかのように、
そこで閉じようかとでもするように、

『勇者』の見る前で、

内に向けて『収約』を始めていった。

匿川 名  2019-06-02 23:50
※閑話休題※

わあ、なんだかにわかにダークファンタジーっぽい!
・・・ような気がします(爆
しかしこの展開でノベリット大丈夫なのかなあ?
一応主人公なのに情けないぞ!
アニエスとカイザーだけ戦わせて良いのか?!
『緑の閃光』に貫かれた『なんちゃって二人っ子』のマナとカナのその後は一体?!?!?!

・・・まあ、懲りずに続けますが、実は脱線・超・上等です!
どなたでもテキトーに流れを変えていただければ私としては乗っかりますが、さて?

匿川 名  2019-06-02 23:44
その歪んだ頬の肉が引きつるようにたわむのを、ヒトは『喜悦』と判じるのだろう。
「かかっ」と金属質な音が漏れたのはその口の中からであって、ヒトはそれを『法悦』と呼ぶのであろう。

 世界を『紡ぐ』のは何であるのか。
 その問いに立ち返るなら、『人』と答えるべきなのだろう。
 あらゆる命に意思があるなら、あるいは、
 あらゆる存在に意思があるなら、
 その観測する数多の事象は、ただそこに在るだけなのに、意味を見出そうとするものは、万物において『人』のみに過ぎないからだ。

―――ならば、

世界を詠むものは何であろう。
眺め慮り、在る姿からその様(ざま)を心に詠むものは、何であろう。

皇よ、
皇よ、
わが、皇よ!

――――我は汝の屍を踏み越えることで世界の頂に至らんとする者為り――――

歪んだ男は歪んだ微笑みをその貌(かお)に貼り付けたまま、ゆらゆらと両の掌を水晶球の上に揺らした。

我は我こそは――――世界を詠む者為り。

そして、その透き通る玉の中に、
その玉に満ち行く緑色をした虚空の中に、
男は骨張ったひょろ長い人差し指を呪いを込めるように向けた。
邪悪な玉の中にたちまち垂れ込めるような灰色をした暗雲が立ち昇る。
それは此処とは異なる場所で、世界を占める空の色。
ひひっ、と男が嗤う。
邪悪が満ちる水晶玉の中で、独り輝きを遺しつつ抗う屈強な男の頭上に、酷く邪悪な意思を持った暗雲が満ち満ちる。


――――雷が落ちようと、している。

匿川 名  2019-05-29 23:07
脱兎の如く彼が駆けたとして、誰がそれを責めることが出来たであろう。
彼を追いかけるのは遠い悲鳴で絶叫で、しかしそれはどこまでも彼の身に付き纏い、濡れた煙のように忌々しく、振り払いようもなかった。
恐れで心と肉体が乖離する。
しかしそれもやむを得まい。
圧倒的な絶望を前にして、『走れ、走れ、ひた走れ』と命ずる脳髄に、肉体のあらゆる機能が応答の遅れを見せたとして、つまりは――――
足がもつれ、転び、起き上がろうとするさなかにもその足は前へ前へと駆けようとするので、立ち上がることすら満足に出来ないまま――――
のめり、あえぎ、その双眸が不意に空を見上げたときに、緑色の闇がそんな彼をあざ笑うかのような満つり方で果てまでを占めたとき、

彼は身に纏う悲鳴の主が己であると初めて識った。

永く短く、しかし彼自身は遙か彼方まで駆けたと思った。
しかしそんな彼がぎょろりと振り返った先で、百間も離れてはいない処で、彼の『犬』は闘っていた。

無限の闇を、
世界を包む暗黒を、
祓うのは、
祓おうと足掻くのは、

眩さは儚く、しかし確実にそこに在ったので、

彼は、皇の状(ざま)を視た。

「なんだ」

と言葉が口をついて出た。

圧倒的なまでの絶望にとらわれながら、深夜の荒海の中で、揺れる小舟に差す松明よりも仄かなくせに、アレは明らかな胸の奥を震わせる『何か』だ。

何か。

なにか。

暗闇と悪意と絶望の中にほの輝(ひか)るそれは、
それを、

人はきっと『勇気』と譬えるのだろう。

闇に足掻き、堂々と叫(たけ)びを挙げる彼の側に、闇の中から陽炎のように揺らぐ何かが添った。
幽霊のように頼りなく、しかしそこに在るのは明確な意思であって、
それは『ともに抗う』と誓うかのように、白銀の刃をゆらゆらと閃かせ、
皇の傍らに侍り、叫(たけ)んだ。

「――――アニエス」

彼は、ノベリットは己が眼に写る影の名を呼んで、がくりと両の膝を地に着いた。

匿川 名  2019-05-26 23:36

犬はノベリットの方を振り返り、口角を上げた。
犬はその筋肉の構造から、微笑むことは出来ない。
ならば今、この犬が微笑むことが出来るのはなぜか。

その時、犬の肩がむくりと腫れた。
両の足の関節がまっすぐに伸びていき、毛がずるずると抜け落ちる。
カイザーが人の姿を取り戻そうとしているのだ。

「や、止めろカイザー!今人の姿を取り戻したら、お前は永遠に犬のままで生涯を過ごすことになるぞ!」

ノベリットが絶叫した。
しかしカイザーは変身を止めない。
肉の毛はずるずると抜け落ち、
身体は本来の男性的な巨躯を取り戻しつつ、
伸びていた鼻と口元は彫像のような鮮やか唇を取り戻し、
微笑みを浮かべながら、囁くように、言った。

「良い。良いのだ、ノベリット。
 我は亡くなるわけではない。
 我が我の姿をとこしえに失ったとして、お前が、お前さえが分かっていてくれたら、覚えていてくれたら、それでいいのだよ。
 我はこれからもお前とともに在る。
 ただ、そのためには少しばかり今ここで『しておかなければならないこと』があると言うだけだ」

『緑の闇』の根源に、一人の男が対峙した。
『闇』は『死の閃き』を男に向けて放った。
男は片手で難なくそれを跳ねて払った。
光が歪み、脇へと落ちる。
男の口角が歪む。
しかしそれは先ほどノベリットへ向けたものとは異なり、怒りと憎しみとたっぷりとそこに湛えていた。

唐突に、地を揺るがすような咆哮を男が上げた。
ノベリットはその後ろから緑の闇を盗み見た。

その『緑の闇』は、

『闇』に感情を認めることが狂気の沙汰で無いのなら、

ノベリットには、

底知れぬ『歓びの具現』、そのものにこそ見えたので――――

匿川 名  2019-05-26 23:35

「あ」

ノベリットはそんな声をどこかから聞いた。
しかしそれがどこから響いたものなのかが分からない。
前か後ろか左か右か。上か下なのか、今か過ぎた一時のことなのか。

その時はたと気がついた。
その声は、ひりついた阿呆の絶望は、
この喉こそが鳴らしたものだ。

詰まりは、

自分自身の中から知らず溢れた絶望そのものの具現としての音なのであって――――

弾けたのは何かが素早く地面を駆ける音だった。
呆けつつゆるゆるとそこまで考えていたノベリットの右側から、強烈な打撃が一撃加わった。
横っ飛びに吹っ飛んでいくノベリットがつい今し方まで立ち尽くしていた場所に、忌の緑色をした閃光が襲いかかり、じゅっと音を立てて地面を焦がした。
ゆるゆると朧な目を向ける。
ノベリットを押し倒しつつ、すかさず邪悪と対峙するのは、一匹の犬の姿だった。

――――カイザーだ。

匿川 名  2019-05-26 23:33
『ク』というのがそれに最も近かった。

ノベリットが『そこ』を向いていたのは偶然に過ぎない。
世界を覆いつくしたのは『光の触手』であり、
邪悪な意思であり、
蠢きであり、
『死』そのものであることは、
『それ』に触れ、
見ただけで一目に、
圧倒的に、

有無を言わさず理解させきるだけの圧力と迫力があった。

『ク』とはノベリットが聞いた音のことで、
目の前で折れ腹を抱える『マナ』の姿で、
彼女の身体を貫く緑の閃光に前後して『ぷしゅっ』とほとばしる血煙の姿で、
それはきっと透明を極めた憎悪の姿で、圧倒的な絶望の具現で、発せられたノベリットそのひとの呟きでもあった。

前のめりに倒れるマナの横で、カナが絶叫していた。
そのカナの頭部を『ク』が襲った。
僅かなひとときに響いた『ク』という音が側頭部を斜めに貫き、ガクンと頭蓋を揺らしたかと思ったら、カナは膝からくたくたと崩れるように倒れた。

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